残クレ住宅ローンを実際に組んだらどうなる?
「家を建てたい気持ちはある。でも住宅ローンが正直こわい。」
これは、家づくりの相談で本当によく聞く言葉です。
住宅価格は年々上がり、将来の収入や老後の暮らしも不透明な今、
“家を持つこと”そのものに不安を感じている方も少なくありません。
そんな中、最近少しずつ耳にするようになったのが
残クレ住宅ローン(残価設定型住宅ローン)という考え方です。
ただし、この残クレ住宅ローンは、まだ一般的な住宅ローンとして広く定着している制度ではありません。 近年、国が金融機関向けの制度整備や後押しを始めたばかりの仕組みで、 現在は「これから普及していく可能性がある新しい住宅ローンの選択肢」という位置づけになります。
※「残クレ住宅ローンってそもそも何?」という方は、
仕組みやメリット・デメリットを詳しく解説したこちらの記事もあわせてご覧ください。
▶︎ 残クレ住宅ローンの基本を分かりやすく解説した記事はこちら
https://oita-soken.jp/blog/31350/
今回のシミュレーション条件(よくあるケース)

今回は、実際のご相談で多い条件を想定しました。
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土地+建物価格:4,500万円
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家を建てた年齢:30歳
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返済期間:40年
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完済年齢:70歳
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金利:フラット35(固定金利1.8%)
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残クレ設定の残価:1,000万円
この条件で、次の2つを比べてみます。
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通常の住宅ローンで4,500万円を40年返済
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残クレ住宅ローンを使い、残価1,000万円を設定
パターン①|通常の住宅ローンで組んだ場合
まずは、残クレを使わない一般的なケースです。
毎月の返済額(目安)
約13.4万円/月
40年間、ずっと同じ金額を支払い続ける
分かりやすく、安心感のある返済方法です。
ただ、現実の暮らしを考えてみるとどうでしょう。
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子どもの教育費がかかる時期
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車の買い替えや修理
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住宅のメンテナンス費用
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老後資金の準備
これらと並行して、
70歳まで毎月13万円以上の返済が続くというのは、
決して軽い負担ではありません。
パターン②|残クレ住宅ローンを使った場合
次に、残価1,000万円を設定したケースです。
実際に返済する元金
4,500万円 − 1,000万円
= 3,500万円
毎月の返済額(目安)
約10.4万円/月
ここで注目したいのが、
毎月およそ3万円の差です。
月3万円の違いが、暮らしをどう変える?

月3万円と聞くと、そこまで大きく感じないかもしれません。
ですが、これが毎月続くと、暮らしは確実に変わります。
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習い事や塾を我慢しなくていい
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貯蓄やNISAに回せる余裕が生まれる
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家族旅行や外食を減らさずに済む
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「今の生活」を楽しめる余白ができる
残クレ住宅ローンは、
家を安くするための仕組みではなく、暮らしに余裕をつくる選択肢だと考えると分かりやすいかもしれません。
70歳で残る「残価1,000万円」はどうなる?

残クレ住宅ローンで、多くの方が不安に感じるポイントです。
「70歳のときに、1,000万円残るのは大丈夫なの?」
ですが実際には、選択肢は一つではありません。
選択肢①|残価を支払って、そのまま住み続ける
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退職金の一部を使う
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貯蓄から支払う
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短期間でローンを組み直す
老後に住む家がすでにあるという安心感は、
想像以上に大きなメリットになります。
選択肢②|家を売却して清算する
ここで重要になるのが、住宅の評価額です。
仮に40年後、
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家の評価額:2,000万円
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残価:1,000万円
だった場合、
売却して残価を支払っても、
1,000万円が手元に残る計算になります。
長期優良住宅など、
性能や耐久性の高い家であれば、
残価を上回る評価がつく可能性も十分考えられます。
選択肢③|住み替えという考え方
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子どもが独立した
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今の家は広すぎると感じる
そんなタイミングで、
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家を売却
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コンパクトな住まいへ住み替え
といった選択がしやすいのも、
残クレ住宅ローンの特徴です。
残クレ住宅ローンは「先送り」ではない

残クレ住宅ローンに対して、
「将来の問題を先送りしているだけでは?」
と感じる方もいます。
ですが実際は、
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今の家計負担を抑えながら
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将来の選択肢を自分で持つ
という考え方です。
残クレが向いているのは、こんな人

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30代で家を建てたい
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月々の支払いはできるだけ抑えたい
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老後の暮らしはまだ決めきれない
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家の性能や安心感は妥協したくない
こうした方にとって、
残クレ住宅ローンは現実的な選択肢の一つになります。
最後に|数字を「自分の暮らし」に置き換えて考えてみてください
残クレ住宅ローンは、
万能な正解でも、誰にでも合う方法でもありません。
ただ、
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仕組みを知り
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数字を理解し
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自分の暮らしに当てはめて考える
ことで、
家づくりの選択肢は確実に広がります。
「自分の場合はいくらになる?」
「将来どうなるか、もう少し具体的に知りたい」
そう感じたら、
まずは資金計画から始めてみてください。