ウォークインクローゼット活用術|暮らしに寄り添う収納設計

収納は、家づくりの中で“後悔しやすい”部分のひとつです。
広く作ったはずの収納がうまく活かせなかったり、逆に収納不足で日々の片付けにストレスを感じてしまったり…。
そんな悩みを解決する存在として注目されているのが「ウォークインクローゼット(以下WIC)」です。
WICは、衣類や小物を一か所にまとめてしまえるだけでなく、日々の暮らしをスマートに整えてくれる空間です。
SOKENがこれまで数多くの住宅設計を手がけてきた中でも、WICの設計と活用次第で“家事のラクさ”“家の美しさ”“暮らしのゆとり”が大きく変わることを実感しています。
この記事では、建築家の目線からWICの魅力を最大限に引き出すための設計・活用術をご紹介します。
1|そもそもウォークインクローゼットとは?利便性と収納力を兼ね備えた空間
ウォークインクローゼットとは、人が中に「歩いて入れる」ほどの広さを持つ収納スペースのことです。
主に衣類や小物をまとめて収納する目的で設けられますが、近年では生活スタイルに合わせてパントリー、趣味収納、家事室的な使い方をするケースも増えています。
WICの主なメリットは次のとおりです。
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家族の衣類を一か所にまとめられるため、管理がしやすい
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見せる収納・隠す収納をバランスよく配置できる
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生活動線に合わせれば、家事効率が格段にアップ
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将来的な使い方の変化にも対応しやすい(収納→ワークスペースなど)
“ただの広い収納”として設けるのではなく、ライフスタイルと動線に合わせた設計ができるかどうかが、WICの価値を大きく左右します。
2|配置がカギを握る。動線に組み込むウォークインクローゼット設計の考え方
私たちが設計する際、WICは「しまう場所」ではなく「動線の中の一部」として捉えます。
収納に行くのではなく、生活の流れの中で自然と収納できる場所にあることが理想です。
以下に、目的別でおすすめの配置パターンを紹介します。
■ 1. 主寝室直結タイプ
最もスタンダードな配置。朝の着替え、帰宅後の着替えなどがスムーズに行えます。
共働き夫婦や、生活時間がズレているご家庭では、寝室との仕切り方や照明設計(ダウンライトや間接照明)も重要なポイントになります。
実例:「寝室との間に引き戸+足元照明」で、夜間もパートナーを起こさず着替え可能な設計。
■ 2. 脱衣室・ランドリー直結タイプ
洗濯→干す→しまう の一連の流れを最短で完了できる動線設計。
特に室内干しスペースとWICを並列に配置すると、雨の日も洗濯に困りません。
実例:「ガス乾燥機(乾太くん)→収納棚→WIC」の順に並べて、洗濯動線を5歩以内に収めた間取りが大好評でした。
■ 3. 玄関・土間収納と隣接タイプ
家に帰ってすぐアウターやバッグを収納できるスタイル。玄関周りが散らからず、来客時にも安心。
ベビーカーやアウトドア用品の収納も兼ねるようにすれば、より便利です。
実例:共働きのご家庭で、夫婦それぞれが「帰宅→WICで着替え→LDKへ」と自然に動ける設計。
3|“使い勝手がすべて”!ウォークインクローゼットのレイアウト実例と設計のコツ
ウォークインクローゼットは広さだけでなく内部のレイアウトが命です。広くても棚が使いにくければ意味がありません。
● 収納の高さと奥行きは“収納物”に合わせて決める
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衣類(かける):奥行き55〜60cm、ハンガーパイプの高さは上下2段が基本
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バッグ・帽子:奥行き30cm程度の可動棚
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スーツケース・布団類:奥行き60cm以上、下部の床置きスペース
収納するモノが明確なら、棚やパイプの高さ・位置を細かく調整します。
● 通路幅は80cm以上が理想
2人で使うWICなら通路は広めに。動きやすく、モノの出し入れもスムーズになります。
● 照明はセンサー付き+温かみのある光が◎
手元が暗いと使いにくいため、センサー付きLEDライトや、棚下照明を取り入れると快適です。
● 扉をつける?オープンにする?
湿気やニオイが気になるならルーバータイプの扉や引き戸がおすすめ。
一方で、オープン型は“見せる収納”としてインテリア性を演出できます。
4|「広く作ったのに使いづらい…」を防ぐ!後悔しないWIC設計とは?
実際に建てたお客様の声を聞いていると、「WICは設けたけど、正直使いづらい…」という声も意外と多いのが事実です。よくある失敗とその対策をまとめました。
後悔ポイント | 対策アイデア |
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暗くて中が見づらい | センサー照明+明るめクロスで明るさUP |
湿気がこもる | 通気扉や換気扇の設置で湿気対策 |
動線が遠く、使わなくなった | 洗面・ランドリーや寝室との連携を意識 |
棚が使いづらい | 可動棚+収納物に合わせた設計 |
ただの“物置化”してしまった | 定期的な整理がしやすいレイアウトを設計段階で用意 |
5|“衣類だけ”ではもったいない。ウォークインクローゼットの多様な活用術
WICの可能性は衣類収納だけに留まりません。空間をうまく活かすことで、多目的に活用することができます。
◯ 趣味空間として
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ゴルフバッグ、登山用品、DIY道具など趣味用品の専用収納スペースに
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書斎や“隠れ部屋”として使えるよう、コンセントや照明、換気計画を仕込んでおくのも◎
◯ 子どもの成長に合わせて
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乳児期はベビー用品やおむつ置き場として活用
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成長後は子ども部屋のWICに転用するなど、将来の変化を見据えた設計がおすすめ
◯ 在宅ワーク・作業スペースとして
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奥行きがあれば、デスクを置いてワークスペース化も可能
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音がこもりにくく、集中できる空間に早変わり
6|まとめ|“あなたの暮らし”に合わせてつくる、ウォークインクローゼットの真価
ウォークインクローゼットは、ただ“広くて便利な収納”ではありません。
ライフスタイル、家族構成、趣味、働き方、将来像までを見据えて設計することで、住まいのクオリティを大きく高めてくれる存在です。
建築家の目線でお伝えしたいのは、
「WICは“物をしまう場所”ではなく、“暮らしを整える場所”である」
ということ。
SOKENでは、家づくりの初期段階から「どこに、どれだけ、どう使うか?」を一緒に考えながら、お客様にぴったりの収納計画をご提案しています。既製品では叶えられない、“本当に使える収納”を実現しませんか?